B.B
「神谷さん、こんにちは」





声をかけると、神谷さんはこちらを振りむいた。男性にも女性にも見える、中性的な美貌が現われる。





「ああ、桐山くんか。いらっしゃい」





神谷さんは、ぼくを客間に通してソファへ座らせてから、いつものように紅茶をいれてくれた。





「神谷さん」





「うん」





「実は昨日、思いがけないことがあったんです」





「へえ。どんな?」





ぼくは昨日のことを、覚えているかぎり話した。真っ黒のセーラー服を着た女の子が転がってきたこと。彼女の名前は乙川環だということ。乙川環はけがをしていたということーー。神谷さんはテーブルに肘をつき、指を組んで聞いていた。





ぼくが話し終わると、彼は言った。





「うん……その子はたぶん、あの乙川家の娘さんだと思うよ」





「乙川家?」
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