薬指~未来への誓い~

縋りついた弱さ

『ハァ……』

映画館を後にしても出るのはため息ばかり。


そりゃあ、あんな事言われたら誰だってため息くらいつくさっ。


『なんかあった??』

ため息の原因を作った当人はこんな調子だし…。



『なんでもない。あぁ~もう!!お腹すいた!!!』

『ちょっと早いけど、飯行く??』


ヤケクソになってた私に笑いながらゴハン誘ってくれたけど……



私は行けない。


だって、独身じゃないもん。

今日の事は真吾には『友達と映画行ってくる』とだけ伝えてきた。

真吾は『楽しんでこいよ』って優しく言って出勤をした。


夜になれば真吾はお腹を減らして帰ってくるし…、私は家に帰らなきゃ。



『ゴメン、せっかくだけど、今日はもう帰るわ。家事しなきゃいかんしね~』

精一杯の笑顔で言ったけど心中は複雑だ。

それは、智哉といたいからじゃなく、また“あの場所”に帰らねばならない事。
智哉と出かけた今日は私にとっては現実逃避のような感じで、帰ればまた現実に引き戻される。


『そっか。じゃあ、駅まで送る』

『ありがと』

駅までの道、智哉は色々話しかけてくれたのに私は素っ気ない返事しか出来なかった。
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