薬指~未来への誓い~
『腹、へった』


そう言って真吾は私の横を通り過ぎて、リビングで着替え始める。



何事もなかったように…。

いつも通りに…。




『倖知、俺は大丈夫だから…』


私に背を向けたまま真吾は話始めた。



『俺が倖知を傷つけてさ、倖知が逃げたい気持ちも分かってるつもりだし…。それに、それでも一緒にいたいって思ってるのは俺のワガママだからさ♪』



振り返って笑う真吾。



あぁ…真吾は知ってるんだ…。

真吾は、気付いてたんだ…。


バカみたいに傷つけてるのは私の方じゃん…。




『……わ、私』


『今日のごはん、ナニ??』




話をそらしてくる真吾に…そのまま甘えて、話を終わらせればいいの??



違う…よね…。


違うよね、倖知??



『ごめんなさい』

『ん??もしかして作ってないの~??仕方ないな、今日は俺が…―』

『違う!!!』




そんなにも、物分かりのイイ振りして、私を守らないでよ…。



『私が…浮気してるの、知ってるんでしょう?』


『……知ってるよ』


『いつから…?』


『かなり前』


『なんで??なんで何も言わないの??』



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