薬指~未来への誓い~
一度きりの奇跡
ピンポーン… ♪♪
日が沈むのが早くなり、もう外が暗い6時すぎに彩は息を切らせながら来てくれた。
いつも頼ってばかりだ…私。。
『倖知、これ…』
小さい紙袋を渡されて…。。
もちろん中身は私の頼んだ“妊娠検査薬”。
『ありがと。いきなりゴメンね』
『そんな事気にしなくていいよ』
『ありがと』
こんな時…
私は彩に何も話さないし、
彩は私に何も聞かない。
ただ、“その時”が来るまで、そばにいてくれる…。
これが…私たちの関係。。
『やってくるね…』
『うん。待ってる』
“待ってる”…この言葉が重い足取りの私を前に進ませてくれる。
紙袋片手にトイレに入り、パッケージを開ける。
震えないでよ…
震えるな、倖知!!
自分の手が、やけに他人ごとのような気持ち悪さで震えるのを必死に我に保つ。
尿が試験薬に染み込んでゆく…。
判定窓に赤いラインが出れば“陽性”…つまり妊娠。。
『…ふぅっ』
検査薬を握りしめて、目を閉じたまま、大きな深呼吸をした。
静まり返って…自分の鼓動だけが聞こえる…。