薬指~未来への誓い~
呆然としていた私は、1番前に少し猫背で座っている彩の後ろ姿を見つけた。
『……彩っ』
もちろん…
こんな時に駆け寄り声をかける事は出来ないまま、
しばらくすると始まったお坊さんのお経をただ参拝席に座って聞きつつ、
私はずっとおじさんの遺影を眺めていた…。
順番にお焼香が始まる。
私と彩の中学校の校長と担任の先生も来ていた事にこの時気が付いた。
『倖知…』
『あっ…はい』
お父さんが呆然としてた私の膝を叩き、一緒にお焼香へと向かう。
喪主の彩のお母さんに一礼をして、私はお焼香をした。
こういう時に一体何を祈ればいいのだろう…。
テレビとかの情報でよく耳にする“ご冥福をお祈りいたします”なんて言葉…
こんな時にはなんの役にもたたない。
だって…
そんな祈り方が分からないんだもん。
ただ私は心の中で、おじさんへの“ありがとう”を繰り返す事しか出来なかった。