夜の雨の香りと貴方。








雨の中で?


って、なんで知っているのだろう。



「何もしないから泊まっていけばいいよ。」


「え。」


「いや、嘘ごめん。何言ってんだろ俺。そういえば今日初めて会ったのにね。」


「ダメなんですか?」


「え……あ…」


さっきから私は何を口走っているのだろう。


ひとつひとつの言動が彼には迷惑で、困らせている。


どこにいても私ってそういう存在。



「か、えります!!」


濡れた鞄と携帯を手に取り、玄関へと逃げるように走り向かう。


って、あ。

この服借り物だった。


そういえばお風呂を出た辺りから制服が行方不明だ。

一体どこにやったんだろ。


けどそんなのどうでもよくて。

今は恥ずかしい、逃げたい。



靴のかかと部分を踏みつけて、ドアノブに手をかける。


「さっ、さようなら!」



決して後ろは振り返らず、出ていこうと思ったのに…



「待ってよ!」



一方の手首を掴まれてしまった。




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