夜の雨の香りと貴方。
━━━ぎゅううううっ
さっきより苦しい。
犯人はこの人か。
そう、コウさん。
「あー。温かい気持ちいい。」
「暑い苦しい!」
すると緩まる彼の腕の力。
再び楽になった体を起き上がらせる。
本当に、この宇宙人は…
「何で起きる?寒い。まだ寝よう?」
「寝ません。」
断固きっぱりそう言う。
昔から目覚めは良い方で、一度目が覚めるともうしばらく寝れない。
「えーーーー。じゃあ俺も起きようかな。」
やたらニコニコしながらコウさんが起き上がり、私の横に腰かける。
「おはよう雨音。」
「おはようございます。」
「いやー、起きたら誰かいるって嬉しいね。」
ニコニコの原因はこれか。
でもそういうもの?
「雨音さ、いつ帰っちゃうの?」
「あ………。」
忘れてた。
昨日も無断外泊をしたわけで。
コウさんは心配されていると思っているだろう。
けどね、そんなの一切ないんだよ。
血も涙もない人達なんだよ。
仮に帰りが遅くて怒っても、1日帰ってこないと出ていったと思われるだけ。
もう帰る場所なんてないんだ。
「帰れません。」
「へ?送ろうか?」
「いや、あの……」
何と言っていいかわからず、言葉を必死に探していると、
「………うん。わかった。
今度ちゃんと話してね。」
そう言い、私の頭を優しく撫でた。