夜の雨の香りと貴方。
「テレビ観ててもいいしDVDも観ていいよ。」
「あーはい。」
他人の家でのんびりするのって変な感じするけど。
特にやることもないし、素直に従うことにした。
「夜ご飯までには帰るけどー…。お昼はどうしよっか。あ、俺がオムライスでも作っておいてあげようか?」
過保護なぐらいの優しさ。
正直慣れてないから変な汗が出る。
何か裏があるんじゃないのかとか考えたりしてしまって。
目の前の男の心を読み取るために真っ直ぐ目を見つめてみる。
「え……な、に?
あんま見たら照れる。」
彼は手で顔を覆って、わざとらしく照れたふりをした。
そんな仕草女の子がするものなのに、何故か彼がやっても可愛く思える。
「私…何もできないダメ子みたい。」
「ええ?」
「お風呂もご飯も。本当は女の子がやることでしょう?
でも。」
「でも?」
「コウさんのオムライスが食べてみたい。なんて思ってみたり……。」
「へ…へーっ。なるほどね。そっかそっか。ふーん。」
動揺してるんだか冷静なんだかわからない態度を取る。
でも、
彼には裏も表もなさそうだ。
「美味しく作ります。」
ほら、その笑顔。
私が出来ない本物の笑顔だ。