夜の雨の香りと貴方。







「ふんふんふーん」


コウさんが鼻歌を歌いながら目の前でワッフル作りに取りかかっている。



私はその姿をぼーっと眺めているだけ。


その明るい茶色の髪の色は何て言うのだろうとか、前髪の間から覗く睫毛が男のくせに長いだとか。

そんなこと思いながら。



穏やかに流れる朝の一時。


しつこいようだけど、まだ自分がそこの登場人物だということが信じられない。



「これ、何つけて食べる?」

「へっ?」


いきなり話しかけられるものだから少しびっくりした。


「これに…って、何考えてた?」


「な、何も?」


「嘘つきか。」


「じゃあ毛のこと考えてました。」


「ぶっ。何それ!」


「髪の毛の色とか、睫毛の長さとかです。」


「え?俺の?」


「お、俺の。」


そこ聞かれると変に困るんですけど。



「あーやだやだやだっ。」


「え…?ごめんなさ…い?」


「雨音さー…なんか、変。そうやって見つめるとか考えるとか、わけわかんない。あー!何言ってんだ俺。謎!」


そうだね。

コウさんが一番変でわけわかんないし謎。





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