夜の雨の香りと貴方。
なんでこんな時に。
道路に進もうとする足を引き返す。
「わーっ!びしょびしょじゃん!本当にごめん!」
この人は何を謝っているの?
知り合いでもなさそうだし。
首を傾げると、
「あー、俺さっき君に水ぶっかけた奴。気になって戻ってきた。」
律儀な人もいるんだな。
人をひいても戻ってこない人がいる世の中なのに。
「あれ、傘は?」
「……持ってないです。」
「ええっ!なんで?」
「………………。」
私が黙り込むと、彼は何を察したのかこう言った。
「俺の家においで。」