夜の雨の香りと貴方。

温もり







新手の不審者みたいな人だけど、


真っ暗な闇の中に小さな光が現れて、それに近付いてみようと思った。



ただそれだけで彼の家へとついていった。



車を走らせて20分で着いたそこは、新聞のチラシで見たことのあるマンションだった。


「………ここ?」


「そ。狭いし汚いけど我慢して。」



10階にある部屋に促されて入る。


「おじゃまします。」


入った瞬間、ふわっと洗剤の匂いがして。

玄関からして全然汚くない。



「荷物そこら辺置いて。それからお風呂。着替えは適当に貸すから。下着は……今買ってくるからゆっくり入ってて。」


ぼんやりとする私にテキパキ指示してくる彼。



「いや…あの………。恥ずかしく…ないですか?」


「何、下着?大丈夫大丈夫!」



あまりにも陽気な人だから拍子抜けしてしまう。



「入浴剤はでっかい棚にあるからね。日本の名湯シリーズ!」



なんでこの人は、


「じゃあ行ってきまーす。」


こんなに優しいのだろう。



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