夜の雨の香りと貴方。
「うん、お風呂も綺麗だ。」
教えてもらった入浴剤を片手に、お湯が溜まるのを待つ。
玄関にある靴の数からしてたぶん一人暮らし。
男の人の一人暮らしって汚いイメージだったんだけど、それが崩された。
「あ、いい匂い。」
白く染まったお湯に肩まで浸かる。
なんだか別の世界に来た気分。
その証拠として、濡れた制服を脱ぐまでおばさんのことを忘れていた。
怒ってる………よね。
携帯も通じないだろうし、逃げたと思われたかな。
帰ったらおじさんに殴られる。
脇腹に残る痣。
これは2ヵ月前に急なクラス会で帰りが遅くなった時にやられた跡。
見るたびに悲しさが込み上げてくる。