狼少女と王子様
「ちょっと離して!」
腕を突っ張って離れようとしても
さすがに男の力には敵わない
「離さない。
茜が泣き止むまで、絶対に。」
「は?泣いてないし、
てか、泣いてるわけないじゃん。」
なに言ってるの?
頭可笑しいんじゃない?
不意に伊純の指が私の頬に触れる
「じゃあこれはなに?」
「それは・・・。」
伊純が見せたのは
私の頬からすくった水滴
そんなの・・・・・。
「まさか汗とか言わないよね?」
ぎくっ
思っていたことを当てられて
少しばかり焦る私を
伊純は更に苦しいくらいぎゅっとした
「もう、我慢しなくていい。
泣いたっていいんだ。
葵ちゃんのこと、自分のせいだと
もう思わなくていいんだよ。
お願いだから無理して誤魔化すな。」