狼少女と王子様
「んっ。」
唇に柔らかい感触
ど、して
私、渓にキスされてるの?
渓はすぐに唇を放してくれたけど
私はいきなりのことに
息が上手く吸えない
「俺は茜が好きなんだよ。
好きな奴が泣いてる姿
なんて見たくないんだよ!」
渓が私を好き?
夢でも見てるの?
自分が傷つくが嫌で
関わるなと言った
私を?
どうして。
「私は、伊純なんか
お前なんか嫌いだ!」
お願い、私を嫌って。
弱い私はあの時捨てたの。
もう、誰にも頼りたくない。
裏切られるのは嫌だから。
「俺は嫌いと言われても諦めない。
どんなことをしてでも、
俺に絶対惚れさせてやる。」
渓はそれだけ言うと
空き教室を出て行ってしまった。