狼少女と王子様
この時分かってしまった
海が茜を好きだと
内心茜を傷つけておいて
好きはないだろ
っと思ったが
自分も人のこと言えないと
気がついて言うのを止めた
しかも、もしかしたら海は
茜に告白してないかも知れない
だったら海が自分で言わなきゃ意味がない
「やっぱり、茜は渓が好きなんだ。」
涙目でそう言い、逃げるように
何処かに走って行ってしまった
「海の馬鹿。」
そう言う茜も泣きそうで
「俺が追いかけるから
茜は遅いから帰れよ。」
茜への優しさ
嘘。
見てられなかった
茜に追いかけて欲しくなかった
茜が海のことで悲しむのは
もう見たくない
「分かった。よろしく。」
“追いかけたい”
茜の顔にそう書いてあって
胸が張り裂けそうだった