Blood smell 2
怒りで顔をゆがませる皇帝に
飄々と言ってのける教皇


私は
ただその光景を傍観していた


「…さぁ、その人間を連れて行け。」


教皇の指示で
どこから来たのか黒いマントの黒人が
私を乱暴に立ちあがらせ
先を促すように肩を小突いた


ふらつく足で
私はその場を後にする



扉が閉まる間際
一瞬だけ見えた皇帝の顔は
美しさとはかけ離れた
ゆがんだものだった…


そして

もとの
暗い部屋に乱暴に押し込まれ
手と足を拘束される


肩からは骨が付き出そうなくらい
はれ上がり
全身傷だらけだった


痛みはそれほど感じないのに


暗い空間と
寒さが私の体力と気力を奪って行った


『これがいなければ
シュルドはここには来ない。』


教皇の言葉を思い出す

修二はここに向かってるの?

私を助けるために…?

わざわざ…そんなこと…
自分から敵陣に突っ込むなんて



ダメだよ…


修二…ここに来ちゃだめ…


ここに来たら
殺されちゃうよ…
< 47 / 62 >

この作品をシェア

pagetop