魔法学園ユートピア
前哨戦
「死ね!」

狼男の爪は確実に学園長を捕える勢い。


ガシッ、

狼男の後ろ髪に当たる部分の毛皮を誰かが掴む。

「な…に?」

狼男が目を丸くする。


「おい、誰の女に手を出してるか。

わかってんのか?」


「貴様!」

狼男が後ろに引かれる。

「ナイスタイミングよ、幸大君。」

「まったく、学園長には敵いませんね。」

「放せ!」


「生きて、いられると思うなよ?」


グンッ、

幸大が狼男を後ろに引き、手を離す。

と、同時に狼男の前に立ち、

「ハァッ!」

ドウッ、

狼男の顎と鳩尾(みぞおち)に両手で掌底を撃ち込む。

バゴンッ、

魔力で強化された攻撃は壁を撃ち抜き、狼男を校舎まで吹き飛ばす。

「かめ◯め波?」

学園長が訊ねる。

「違います。

掌底です。

ここの壁をなんとかしてください。

それじゃ。」


撃ち抜いた壁の穴から強化した足で飛び上がり、狼男を追う。


「大きな穴を開けて、困ったものね。


…月、満月ね。

満月で最も強くなる狼と、色んなモノで強くなれる人間。


…やらなきゃいけないことが多いわ。

まったく。

暇のない仕事なんて拷問だわ。」
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