マイ・シュガーランド



柘植さんはわたしを守るように抱き寄せながら歩き続けた。




タクシーにも乗らず、なるべく人通りの少ない道を選んで歩く。





なにも言わずにいるのは柘植さんの優しさ。



一人で歩くことも、前も向くこともままならない今のわたし。




あんな人のために涙なんか流したくないのに。



止めどなく流れる涙を抑えることができなかった。













「――――――あ、雪。」





柘植さんの囁きに顔を上げる。



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