【短編】彼と私
初デート、といっても向こうはただのお詫びで奢ってもらってる、といったところだろうが。
彼の指定した場所は、駅から数分のところにある静かでおしゃれなカフェだった。
そこで、彼は妻子もちだということを知った。
──デキ婚だからさー。別に俺はあいつのこと好きじゃないんだよね。おろせっていったのに勝手に産むし。マジで参るよ。
そう語った彼を私は今でも覚えている。
本当に嫌そうで、私がなんとかしなきゃって思った。
帰りに、私のほうから誘った。
彼は最初は渋っていたが、すぐに優しい笑顔で私をエスコートしてくれて、そこから私たちの関係は始まった。