【短編】彼と私
プルルルルルルル…
携帯が震える。
最近買い換えた携帯は、着信音が初期設定のままになっている。
「もしもし」
『叶芽(カナメ)?』
「うん。どうかした?」
『用はないんだけどね。カナの声聞きたくなった』
「何それ」
クールぶっているけど、本当は頬が緩むぐらい嬉しいんだよ?
わかってる? 龍二(リュウジ)…
『てか、今度いつ会う?』
「もう次の話?」
『だってカナに会いてぇし。カナは違うわけ?』
ちょっと拗ねたような言い方は、彼が悪巧みをしている証拠。
そして、私が彼と同じ気持ちだってわかっているという合図。