【短編】彼と私
だからいつも負けてしまう。
だからいつも言ってしまう。
「私も龍に会いたい…」
『ん、知ってる』
その笑いを含んだ声で喋らないで。
本当に今すぐ会いたくなる。
「……会いたいよ」
思わず漏らしてしまった本音の中の本音。
『叶芽…』
「ごめん! 今のは忘れて」
慌ててそういったけど、彼にはバレていたに違いない。
だって、
『なんかあったら絶対行くから』
そういってくれたから。
それだけのことが嬉しくてたまらない。
まだ、彼のとなりにいていいんだって思えるから。
「うん。飛んできてね。絶対だよ」
『わかってる』
「『大好き』」