秋月紀行
カラン、カラン。
(おっ、久々のお客様だ。)
冬真は待ってましたと言わんばかりの顔で客人を見た。
『い、いらっしゃいませ。』
興奮で、声が上ずっている。
『秋斗!お客様!』
返事がない。
『少々お待ち下さいね。……秋斗ぉ』
冬真は、昨日買ったばかりのジクソーパズルに熱中している、秋斗の耳の横で大声を出してやった。
『うるさいなぁ。わかってるよ』
(分かってるんなら、さっさと返事しろよ!)
など言えるわけもなく、冬真は笑顔を崩さなかった。