綾瀬くんと平凡な喧噪
ーーそしてその「しょっぱい青春」に最も近い場所こそ、生徒会長という役職ではないだろうか。




こうして生徒会長に立候補した綾瀬くんだったが、生徒会長になれる自信があったのかというと、そうではなかった。





綾瀬くん以外の立候補者は、皆「生徒会長」という肩書きがしっくりくるであろう者ばかりだった。立候補者のなかで、綾瀬くんは明らかに浮いていた。





それなのに、綾瀬くんは本当に生徒会長になってしまった。





ーーこれは一体、どういうことだ?





綾瀬くんは少なからず疑問を感じたが、今は憧れの役職につくことができた喜びを味わうことにした。





議会はもう明日に迫っていて、綾瀬くんの胸の鼓動は高鳴るばかりであった。緊張しているからではなく、議会が待ち遠しいからだ。





きーんこーん、かーんこーん。チャイムの音が、教室に響きわたった。





ーーおっと、もうこんな時間か。





ついさっき弁当を食べ終えた綾瀬くんは席を立ち、いつもどおり図書室へ向かうことにした。





ーーいやぁ、実に清々しい昼休みじゃないか。





背筋をぴんと伸ばし、すたすたと歩く。綾瀬くんは、今どきの高校生にしては珍しいほど姿勢がいい。




こうして綾瀬くんが歩いていると、くいくいっ、と彼の制服の裾を引っ張る者がいた。







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