ヒロインになれない



「…誰ですか?」


私よりも先に口を開いたのは、女の子だった。


「こいつ?元婚約者。」


元?私は…過去の存在?


「あ、婚約者?って前の…あっ、はい…はじめまして、」


「はじめまして。阿木千鶴です。よろしくお願いいたします。」


「わっ!お嬢様だぁ〜!私は上原めぐみです。愛って書いてめぐみって読むの!よろしくお願いします!」


「よろしく、しなくていいよ。じゃあ、な。」


「待って下さい!私は紫輝さんを諦めません…し、隣にたまたま引っ越してきたのも、う」


「運命とか言うなよ。」


「へ?」


「このマンションは親父のマンションで、隣の部屋も俺の家のもんだ。だから、運命じゃねーし必然なんだよ。お前が知らないとこで親が動いてるんだって…本当、なんも知らないんだな。」


「……………」


そうなんだ…


「じゃあな。」


そう言って、彼は部屋を閉めた。彼女は、すごく心配そうな顔をしていた。


私に同情…?



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