雪・時々晴れ
-月曜日-


重い気持ちを引きずったまま会社へ行った。


業務に支障を来たすまいと意気込んだが、栄治と過ごした4年間の思い出はそう簡単に忘れられるものでもなかった。


午前中の業務は何とかこなせたものの、お昼休みは魂が抜けた人のようにぼんやりしていた。


「ねぇ佐伯さん?」


渡辺さんだ。隣には坂井さんも立っている。


「坂井課長、今度の日曜日OKだってさ」


「…あ、水族館…」


私の気の無い返事に坂井さんが


「あれ?行きたくないの?」


私はとっさに


「いえいえっ!行きますよ!」


と答えた。


皆で水族館に行けば気持ちも晴れるか…というか、そもそもこの人と遊びたい為に栄治と別れたんだから、本当はもっと嬉しいはずなのに、そう簡単なものでは無かった。


それから数日間、色々な想いを巡らせた。


もっとケンカしたり話し合ったりしてたら仲良く居れたのかな…とか、でも他の子に気持ちが移った栄治が悪い!とか、想いがグルグル回って、結局“ガキんちょ”な栄治が悪いという結論に至った。




-土曜日-


土曜日は当番製で女子社員二人だけが出勤していた。


今週はその当番の日だった。


もう一人の当番は同期で一番仲が良いマユちゃんだった。
業務は電話番と接客くらいで、それほど忙しくは無かった。


マユちゃんは喜怒哀楽の激しい子で、豪快に笑う子で、仕事は淡々とこなすけど土曜日は本当はいけない有線放送を「誰も居ないから聞こうよ」と、ちょっと砕けた所の有る女の子だ。


〔機動戦士ガンダム〕に登場するフラウ・ボゥに似て活発でソバカスで色白なのだ。


マユちゃんには以前から栄治のことは愚痴っていた。


「遠距離恋愛しんどい…」と言う私に
いつもはそっけなく「ふ~ん、そ~なんだ」
って聞いていたけれど、栄治と別れたことを話したら泣いていた。


家へ帰ると私宛に手紙が届いていると母が言った。


「栄治からやで~何で手紙なん?」


と聞かれたので「何でやろな?」
とはぐらかして手紙を持って急いで自分の部屋へ行き封を開けた。
< 10 / 68 >

この作品をシェア

pagetop