雪・時々晴れ
先輩達は自分の車で家路へ就いた。新潟と言うのは土地柄、車が無いとどうにもならない場所であった。


にもかかわらず私は自分の車を持っていなかった。


自宅から会社まで徒歩5分というのもあったが
既に父が一台所有していたので遠出の時は借りれば済んでいた。


坂井さんが帰り際、歩いて帰る私の左側に車を着けてウィンドウを下ろすと


「じゃーね、気を付けてね」と明るく言った。


別に送って欲しかった訳じゃないけど、何だか意地悪そうな顔に見えて、


「坂井さんも、近・い・け・ど気を付けて下さいね」と返した。


坂井さんも会社から10分位の寮に住んでいた。なのにいつも車で出勤していた。


車が好きなのか面倒臭がりなのか解らなかったけれど、車の自慢話は良くしているし…とりあえず車がらみで誘ってみた。


「今度はマユちゃんと私の二人をドライブに連れて行って下さいね~」


「あぁ、高橋さんと三人で?」


「はい♪」


「いいけど…どこ行くの?」


「それは…考えておきます」
(本当はもう考えて有るけれど)


「解った。じゃ又明日!」


「はーい」


勝手にマユちゃんの名前を出した訳ではなく、以前にマユちゃんと二人で「坂井さん、ゴルフ教えて下さいよ~」と盛り上がっていたのを思い出したからである。


それに、まだデートに誘うほど心の切り替えは早くなかったし、三人の方が気楽に思えた。家に居て暗い気分になるよりとにかく出掛けたかった。


明日、マユちゃんにお願いしてみよう。




次の日、早速マユちゃんにドライブを兼ねたゴルフの打ちっぱなしの話をした。


二言返事でオッケーを貰った。
休みの日にわざわざ出向くのも面倒らしく
平日の会社帰りに軽く行こうということになり坂井さんにもその事を告げた。


休日前の金曜日に決行ということで話はまとまった。





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