雪・時々晴れ
当日はマユちゃんと二人で後部座席に乗り込んだ。


女二人と男一人の場合は自然な形ではないだろうか。


すっかり運転手さんになってしまった坂井さんは相変わらず車の自慢話をしていた。


今度また同じ話をされたら嫌いになりそうだった。


ドライブといってもゴルフ練習場まではそう遠くはなく、小一時間で到着した。


マユちゃんと私はゴルフクラブをレンタルした。手袋まではレンタル出来ないということで、購入する為に選んでいたら、坂井さんが


「二人にプレゼントしてあげるよ」


「え!本当ですか?わーい!」


喜んだものの、予測できなかった出費への気遣いかもしれないと思ったら何だか申し訳なくなった。


坂井さんの気持ちを想像すると…


〔きっと、この子達は将来ゴルフをする為では無く、打ちっぱなしを楽しむ為に来てるのに手袋買わなきゃならないのか…可愛そうに…よし!俺が買ってあげよう〕
こんな感じだろうか…。


ゴルフはまったくの初心者の私達に坂井さんは親切に教えてくれた。
親切といっても手取り足取りではなくスマートな感じだった。


「うまいうまい!二人とも。まっすぐ飛ぶじゃん。」


坂井さんの笑顔に少しドキッとした。


(ずっと一緒に居れたら楽しいだろうな…)


帰りは食事もせずに会社まで送り届けてくれた。家へ着いてから、少し物足りない私は良からぬ行動に出た。


母が作った晩御飯用の炊き込みご飯をタッパーに詰め込み
「ちょっと、坂井さんに持って行ってくる。
手袋買ってもらった御礼に。」


母よりも父が驚いていたが、恋する気持ちが私を大胆にした。

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