雪・時々晴れ
-新 潟-


私にとってここの仕事は気楽だった。


一連の作業さえ覚えてしまえば考え事をしながらでも出来るような簡単な業務である。


というか自分自身がお気楽というか、仕事中にも関わらず野放図状態でいた。


(そういえば…)


社内報に社員全員の顔写真付きの自己紹介が載っていたことを思い出した。


(あのメンテ部の人も勿論載ってるよな…あっ、おった、おった。小田真彦っていうんや…何々…)


私はコメント欄に目をやった。


【明るい工場!
     人への厚情!
         明日への向上!】


(…三段重ね?ショージ村上?)


他の社員はいたって平凡なコメントをつらつら並べている中あの男のコメントは目立っていた。


(へぇ~面白そうな人やな…友達になってくれへんかな…)


それ以上に目立っていたのは父、佐伯部長のコメントであった。内容は今後の意気込みみたいな事だったが、その文章の全てがカタカナで書かれていた為、宇宙人の挨拶みたいになっていた。


【ニイガタコウジョウノハッテンヲキニ、コレカラモ…】どうとか…


(ぷっ…ぷくく……ひぃ~変なの。読みにくいわ!)


「こらっ!仕事中に何笑ってんの!?」


上司の坂井課長が声を掛けてきた。


(げっ、見つかった)


社内報を隠して
「えへっ、ちょっと…」と上目遣いで坂井課長の顔色を伺った。


「佐伯さんさー、時間のコントロールするの下手くそだよね」
いきなり駄目だし。


まーしょうがないかと一応は聞いてみる。


しかし色々言われるうちにだんだん腹が立ってきて


「坂井課長には私のことなんて解りません!」


と言ってしまったあと後悔した。


< 4 / 68 >

この作品をシェア

pagetop