雪・時々晴れ
東京の本社から呼び寄せられたこの男は業務向上の為、PC関係の管理業務に就いていた。


私達入力チームはデータ入力にかかる時間をタイムウォッチで計らされ、日報に事細かく書かされていた。


それだけで時間の無駄なのに、なじられた日には無言では居られません。


ふて腐れる私に坂井は呆れ顔だったに違いない。佐伯一族でなければクビが飛んでもおかしくない…。


佐伯一族など関係なく叱って来るこの男は、いわゆるデキル男オーラをかもし出していた。しかし行動はどこか間抜けていた。


女子社員の人気は二分していたが、好意を持つ子の気持ちも解らなくは無かった。休憩中には天真爛漫に話し、イケメンで良い車に乗った都会育ちの上司…。27歳で課長…。


(そりゃ~もててもおかしくは無いか…でも目だけ見てると女の子みたいだな…。鼻はでかいしキムタクをおちょぼ口にした感じかな。)


でもスーツは良く似合っていた。


私は坂井課長に合わせて標準語を喋っていた。よそ者同士の私と坂井課長が仲良くなるまでには時間は掛からなかった。


そのうちに課長を付けずに坂井さんと呼んでいた。


休日は会社の仲間とよく遊んでいた。


いつのまにか坂井さんも仲間に加わる様になっていた。


と言っても全員会社の人達の集まりなので気は使っていた。


そんな日々を送って居たある日、栄治からの電話が鳴った…。


「俺、金振り込むからお前の口座番号教えて…」


「ええけど…」


心の中では乗り気ではなかった。
ため息ばかり出てくる。


(そっか、私、坂井さんのこと好きなんや…)


今、栄治と話していて気が付いた。


栄治と話すより坂井さんと話している方が楽しいと感じたのだ。


(どないしょーーーーーーー!)


栄治には口座を告げて電話を切った。


(本当の気持ち伝えるしかないよな…)


(…お金使わすの悪いな…)


(会ったときに返せばいいかな…)


二人にとっては大事な話しなので電話で済ます気は無かった。

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