雪・時々晴れ
とりあえずCDの曲に合わせて歌ってみた。


(恥ず…)


照れくささが白けた空気にならない様に内心は必死だけどクールに歌っている私に彼はどう思ったのだろう。


私の顔を見ながら彼は言った。


「なーなんか物真似出来る?」


「えー?出来るけど人前でやったこと無い」


「じゃあ俺が始めてしょーたろうの物真似見れる人になるんだろ?」


「…えー恥ずかしいし…」


「え~いいじゃんやってよ。誰?誰?」


「森高千里とか」


「歌ってみ」


彼のこういうところがとてもO型だなと思いつつ出来るだけ似せなきゃと思って[雨]を歌ってみた。


「あんま似てねーな」


「信じられへん発言!似てないやろうけど!」


「あはは、まーまーまー。じゃ俺、浜田省吾出来るから聞いて」


(浜省ってか。そういえば好きって言ってたな…)


彼と私は歳が一つしか離れていないけれど、ジェネレーションギャップを感じたが次の瞬間にはそんなことはどうでもよくなっていた。


歌いだした彼のその上手さにどれだけ浜省が好きかが伝わってきた。


「すごーい。浜省うま~い」


「だろ?」


「上手いのは前から知ってたけど浜省は特別上手いね」


以前、会社の親睦会の二次会で行ったスナックで私がリクエストした藤井フミヤの[TRUE LOVE]を彼が完璧に歌い上げた事を思い出した。


あの時はまだ彼をこんなに好きになるなんて思っていなかったから普通に上手いなと思っただけだった。


「歌うまいとそれだけでモテたりするんちゃう?」


「ま~ね~!だって俺前の会社でカラオケ行くと歌って歌ってって大人気だったんだからなー」


「ふーーーーん。良かったやん!」


「何怒ってんの?」


「だってモテてたって事はこれからもモテるって事やから何か嫌やなーって」


「でもさ、モテない男よりモテる男のがいいだろ?」


「まぁね。」
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