雪・時々晴れ
村上市は下越の中で最北端の街といった感じであった。


大型複合施設のゲームセンターに立ち寄ったが、一緒に遊ぶ感じではなく、彼は格闘ゲームのコーナーに迷わず進んだ。


「格闘ゲーム…好きなん?」


「そーそー対戦。君の兄ちゃんザンギエフの必殺技サクサク出してくるから負けられないんさ」


「あは、そーゆーことか…ザンギエフて…誰やのん!」


「このでっかい奴。このクルクルって回される技かけらると腹立つんさ」


「へー」


会社のメンテナンス部にはゲーム筐体が設置されていて、彼や菅原君や兄や他の男性社員にとっては遊び道具になっているようだ。もっとも基板のテストの為に置いてあるのだが、終業時間後に始まる男同士の対決は止められない様だ。


(賭け麻雀なんかよりは健全か…お金使ってまで練習するあたり負けず嫌いやな…)


「退屈だよな。ちょっと待ってね、後でメダルコーナーで遊ぼうな」


「うん」


ちゃんと構ってくれなきゃ嫌だとは思わなかった。一応は気を使ってくれるし、正直な自分をさらけ出す彼に戸惑ったりもするけれど、恋人同士ってこんな風がいいんだろうなと漠然と思った。


店を出たのは午後4時頃だったがすっかり夕方模様だった。


「もっと一緒に居たい?」


「居たい!」


「…でもまた今度にしよっか」


「?今日はもうお別れの時間?」


「うーん。俺も一緒に居たいけど、じじいに飯作ってやんなきゃなーって」


「あ、そうなの?」


「うん…週一位は俺が晩飯作らないといつも一人で食ってるからな」


「そーかー、そうやんな!それはそうしないと。」


私は何時かじいちゃんと彼の三人で一緒にご飯が食べられる日が来るのかなと想像した。


残念では有るけれど、少し期待して帰り道に16日が私の誕生日であることを告げると彼は飯でも食いに行こうと誘ってくれた。


やっと会う間隔が縮まった事に彼との関係も縮まったように思えた。
< 63 / 68 >

この作品をシェア

pagetop