雪・時々晴れ
案の定、栄治は土曜から日曜に架けて車でやって来た。


「遠いのに…」


「俺、電車とか飛行機、嫌やから」


「まぁそうやけど…」


両親への挨拶も程々に私は栄治を自分の部屋へ連れて行った。



「なぁ、どうゆうこと?」


栄治が切り出した。


「…どうって、電話で言った通りやけど…」


私は栄治に絆されまいと、冷たくする事を決めていた。


「相手、何歳?」


「27」


「おっさんやん!」


「おっさんちゃうし、だいたい栄治からは全然愛が感じられへんねん」


全然ではなかったが大げさに言った。


「……愛ってなんやねん……」


「愛は…愛やん」


自分でも言ってて解らなかった。


「とりあえず、栄治は思いやりとか優しさが足らんと思う!」


「じゃあ俺、変わるから別れるとか言うなって」


「もう無理やって、一回でも他の人に気持ちが向いた相手にだんだん虚しくなってくるねんって。今は別れたくない一心でそんなこと言ってるだけやねんって!」


「絶対に無理なん?」


「無理…」


そんな会話が何度か繰り返された。



ベッドに腰を掛けていた栄治は黙りこくって床の一点を見つめて涙を流した。


栄治が泣いてることに驚いた。
私も泣きそうになった。
つい、隣に座って涙をぬぐってあげたくなったが堪えた。


「泣きなや…」


「俺かって、泣きたくないわ…」


「………………」


どれ位の時間が経ったのか…
一緒に居る空気が辛すぎた。
だからと言って
「もう、帰りー」
とは言えなかった。


「俺、帰るわ」


「うん…」


車まで送りながら、悲しそうな顔の栄治に、つい「ごめんな」と言っていた。




「じゃーな」



「うん…」




車を見送った後、いっぱい泣いた。

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