サクラ誘惑
真剣に言うさとるに返す言葉が見つからなくて。
「…からかってるでしょ?」
「いいや。からかってないよ」
やっと出せた言葉を否定されたらもう何も言えない。
…恥ずかしい。
顔の熱が上がるのが自分でもわかる。
「べ、勉強始めよ」
慌ててさとるから目を逸らし、机の上の教科書に手をつける私。
これで逃げられると思ったのに。
ふーっ
「ひゃっ!?」
耳に息を吹き掛けられて、思わず変な声をあげてしまった私。
耳を抑えながら、ゆっくりさとるを見ると
「耳、がら空き」
そう言ってふっと笑っていた。