きみのうた
ガタン・・・ゴトン・・・
電車が揺れる。
「・・・」
「・・・」
お互い、何も話さない。
「あ、笹野って彼氏居るの?」
「え?ううん、居ないよ。倉井君は?」
そう聞いた瞬間、倉井君の表情が曇った気がする。
そして何も言わなくなった。
あれ・・・?
ヤバいこと聞いちゃったかな・・・?
「倉井君・・・?」
「あ、わりぃ。俺も居ないよ。募集中」
「そうなんだぁ」
良かった、フリーで。
『次はー松山~松山でございます~』
あたし達が降りる駅が呼ばれる。
「倉井君、降りよう」
「あぁ」
ホームに降りると倉井君は立ち止まる。
「どうしたの?」
「俺、ここで弟待ってんだわ。だからここでバイバイ」
「うん、分かった。また明日ね」
「おう」
あたし達は手を振って別れた。