きみのうた


「俺・・・」

続きを言いかけた時、あたしの指が動いた。

動かせたんじゃない。

続きが聞きたくなかった。

きっと聞いちゃいけない気がして。

「笹野!?聞こえるのか!?」

倉井君の大きな声。

「あの!笹野の意識が戻りました!」

倉井君が医者のひとに教える声が聞こえる。

そしてまもなく、先生っぽい足音が聞こえた。

「笹野さーん、声聞こえますかー?」

「は・・・っ」

「ちょっと眩しいかもしれないよー」

先生があたしの目を開けたのは分かったけど、明るいのかは分からない。

「・・ご両親は居ますか?」

「あ、はい・・」

「ちょっと来てください。お話があります」

先生とお母さん達が病室を出ていく音がした。

「笹野、大丈夫か?何があったかは全部夏帆から聴いた。本当にごめん・・・」

「倉井・・君は・・悪くない・・大丈夫・・だから・・」

「笹野・・、ごめん・・・」

倉井君の声のトーンがどんどんと落ちてくのが分かった。

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