黒き藥師と久遠の花【完】
姉が、『守り葉』として守るべき人がバルディグにいる。
もうこれだけの事実で、自分の答えは決まっている。
決まっているのに、会いたいのに。
ここを離れたくない――。
答えに詰まっていると、ナウムが鼻で笑いながら、椅子の背もたれへ寄りかかった。
「この場ですぐに答えを出せっていうほど野暮じゃねーよ。少し考える時間をやる……まあオレも忙しい身だからな、明日の朝にバルディグへ発つ。それまでにここへ来なかったら、いずみと会うのは諦めるんだな」
返事をする気になれず、みなもは無言で立ち上がり、部屋から出ようとする。
扉を開ける間際、背後から「いすみに悲しい思いをさせんなよ」とナウムが追い打ちをかけてくる。
悔しいが、認めるしかなかった。
この男はこちらの性格も考えも、よく理解している。
ナウムの手の平で踊らされているという感覚が、全身へ麻酔がかかるように広がっていく。
それが体の上を這いずり回り、言いようのない不快感を与えてくる。
もしナウムについていくとすれば、ずっとこんな思いをするのかと、みなもは顔をしかめた。
もうこれだけの事実で、自分の答えは決まっている。
決まっているのに、会いたいのに。
ここを離れたくない――。
答えに詰まっていると、ナウムが鼻で笑いながら、椅子の背もたれへ寄りかかった。
「この場ですぐに答えを出せっていうほど野暮じゃねーよ。少し考える時間をやる……まあオレも忙しい身だからな、明日の朝にバルディグへ発つ。それまでにここへ来なかったら、いずみと会うのは諦めるんだな」
返事をする気になれず、みなもは無言で立ち上がり、部屋から出ようとする。
扉を開ける間際、背後から「いすみに悲しい思いをさせんなよ」とナウムが追い打ちをかけてくる。
悔しいが、認めるしかなかった。
この男はこちらの性格も考えも、よく理解している。
ナウムの手の平で踊らされているという感覚が、全身へ麻酔がかかるように広がっていく。
それが体の上を這いずり回り、言いようのない不快感を与えてくる。
もしナウムについていくとすれば、ずっとこんな思いをするのかと、みなもは顔をしかめた。