黒き藥師と久遠の花【完】
 何も言えずにいると、レオニードから唇を重ねられる。
 
 ずっとこのまま時が止まってくれればいいのに。
 そんな夢のようなことを思いながら、みなもはレオニードの首に腕を回し、より深く口づけを交わす。

 と、急にレオニードが顔を上げ、頭を振った。

「どうしたの?」

「いや、少し目眩がして……」

「貴方もずっと休んでいないからね。先に上へ行っててよ。俺も後片付けが終わったらすぐに行くから」

 即座に返事をしようとしたレオニードの口は、わずかに開いただけで動きが止まる。
 眉間に皺を寄せて苦しげに唸ると、彼はみなもから離れた。

「……すまない、先に休ませてもらう」

「うん。無理して俺が来るまで起きていなくてもいいからね。しっかり休んで、明日には元気な顔を見せて欲しいな」

 みなもが精いっぱいの笑顔を浮かべると、レオニードも苦しげながらも微笑を返す。
 そして背中を向け、二階への階段を上って行った。
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