黒き藥師と久遠の花【完】
    ◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 ふと何か聞こえたような気がして、レオニードは目を覚ます。

 まだ辺りは暗く、日は昇っていない。
 窓の外をよくよく見てみると、ほんのわずかに山際のほうが明るくなり始めていた。

 体を起こして、隣で寝ているはずのみなもへ視線を送ろうとする。
 しかし彼女の姿はなく、いつもより冷ややかな空気だけが流れていた。

 嫌な予感がする。
 レオニードは大きく体を響かせる鼓動を抑えようと、深呼吸する。

(……みなもはどこに行ったんだ?)

 ベッドから抜け出し、レオニードは念のためにボリスの部屋と空き部屋を確認する。
 どちらもベッドのシーツは整っており、人が使った形跡はない。
 
 もう目が覚めて下に行ってるのかもしれないと思い、今度は一階へと下りていく。
 階段を下りる最中、居間からランプの灯りと思しき光が見えた。

(よかった、眠れなくて起きていただけなのか)

 安堵の息をつき、レオニードは階段を下り切ってからすぐに、灯りがあるほうへと顔を向けた。

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