黒き藥師と久遠の花【完】
「……そこにいるのは、誰だ?」
ようやく聞き取れる程のかすれ声。一言話すのも辛いのだろう、息も絶え絶えだ。
「安心して、俺はこの村の薬師。貴方の治療をしている」
警戒されている気配が、ひしひしと伝わってくる。
余計な緊張は傷にさわるだけだ。
みなもは顔を近づけ、努めて優しく笑いかける。
「俺はみなも。貴方の名は?」
「……レオニード」
「事情は知らないけど、大変だったね。今はしっかり休んで、体力を回復させないと」
熱を出した時に姉がしてくれたように、みなもはレオニードの頭を撫でる。こうされると安心して、眠りについたものだ。
しばらくレオニードの息は荒かったが、次第に弱まり、寝息に変わっていく。
眠ったのを見計らい、みなもは顔を上げる。
と、なぜか浪司は瞳を泳がし、こちらに目を合わせようとしなかった。
「どうかした?」
「あー、なんだ、その……見たらいけない物を見た気がする」
たまに浪司はよく分からないことを言ってくる。理解できず、みなもは短く息をついた。
「浪司、疲れているんじゃないか? 先に休んだほうがいいよ」
「おお、そうさせてもらうぞ。一眠りして頭を冷やしてくる」
浪司は「調子狂うぜ」と眉間を揉みながら、部屋を出ていく。
そんなに変なことをしただろうか? みなもは首を傾げて見送ると、椅子に座り直してレオニードを見つめる。
ようやく聞き取れる程のかすれ声。一言話すのも辛いのだろう、息も絶え絶えだ。
「安心して、俺はこの村の薬師。貴方の治療をしている」
警戒されている気配が、ひしひしと伝わってくる。
余計な緊張は傷にさわるだけだ。
みなもは顔を近づけ、努めて優しく笑いかける。
「俺はみなも。貴方の名は?」
「……レオニード」
「事情は知らないけど、大変だったね。今はしっかり休んで、体力を回復させないと」
熱を出した時に姉がしてくれたように、みなもはレオニードの頭を撫でる。こうされると安心して、眠りについたものだ。
しばらくレオニードの息は荒かったが、次第に弱まり、寝息に変わっていく。
眠ったのを見計らい、みなもは顔を上げる。
と、なぜか浪司は瞳を泳がし、こちらに目を合わせようとしなかった。
「どうかした?」
「あー、なんだ、その……見たらいけない物を見た気がする」
たまに浪司はよく分からないことを言ってくる。理解できず、みなもは短く息をついた。
「浪司、疲れているんじゃないか? 先に休んだほうがいいよ」
「おお、そうさせてもらうぞ。一眠りして頭を冷やしてくる」
浪司は「調子狂うぜ」と眉間を揉みながら、部屋を出ていく。
そんなに変なことをしただろうか? みなもは首を傾げて見送ると、椅子に座り直してレオニードを見つめる。