黒き藥師と久遠の花【完】
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
日差しが強まり、バルディグの城下街を包む冴えた空気の中に、ほのかに暖かな春の気配が混じる頃。
レオニードと浪司は庭師の親方に連れられ、ナウムの屋敷へと向かった。
「二人とも、あんまり硬くならなくてもいいぞ。ナウム様は気さくな方だから、多少は無礼な口を利いても笑って許してくれるからな」
恰幅のいい中年の親方は、大口を開けて笑いながら歩いていく。
親方を先頭にして門を潜ると、正面を迂回して裏側にある使用人の出入口から中へ入っていった。
薄暗く狭い通路を一列になって進むと、急に辺りが明るくなり、美しい庭園が目の前に広がった。
老人に扮した浪司が、「おおっ」と感嘆の声を上げてキョロキョロと見渡した。
「お屋敷の中にこんな立派な庭があるなんて、想像すらせんかったぞ。なあ?」
同意を求められ、レオニードは「俺もそう思う」と返事をしながら中の様子をうかがう。
庭園を中心に、四方へ廊下が伸びている。自然の光が辺りを照らしているが、廊下の奥までは届かず、薄暗くなっている。
南側の廊下の先には大きな扉が構えている。おそらく扉の向こうは正面玄関になるのだろうと、レオニードは頭の中で屋敷の地図を作っていく。
残り三方に伸びる廊下は、それぞれ突き当たりに部屋がある。
使用人の寝所だろうかとレオニードが考えていると、浪司がこちらの背中を叩いた。
日差しが強まり、バルディグの城下街を包む冴えた空気の中に、ほのかに暖かな春の気配が混じる頃。
レオニードと浪司は庭師の親方に連れられ、ナウムの屋敷へと向かった。
「二人とも、あんまり硬くならなくてもいいぞ。ナウム様は気さくな方だから、多少は無礼な口を利いても笑って許してくれるからな」
恰幅のいい中年の親方は、大口を開けて笑いながら歩いていく。
親方を先頭にして門を潜ると、正面を迂回して裏側にある使用人の出入口から中へ入っていった。
薄暗く狭い通路を一列になって進むと、急に辺りが明るくなり、美しい庭園が目の前に広がった。
老人に扮した浪司が、「おおっ」と感嘆の声を上げてキョロキョロと見渡した。
「お屋敷の中にこんな立派な庭があるなんて、想像すらせんかったぞ。なあ?」
同意を求められ、レオニードは「俺もそう思う」と返事をしながら中の様子をうかがう。
庭園を中心に、四方へ廊下が伸びている。自然の光が辺りを照らしているが、廊下の奥までは届かず、薄暗くなっている。
南側の廊下の先には大きな扉が構えている。おそらく扉の向こうは正面玄関になるのだろうと、レオニードは頭の中で屋敷の地図を作っていく。
残り三方に伸びる廊下は、それぞれ突き当たりに部屋がある。
使用人の寝所だろうかとレオニードが考えていると、浪司がこちらの背中を叩いた。