黒き藥師と久遠の花【完】
あの軽薄そうな顔を見るだけで、殺気が湧き出てくる。
殴り倒したい衝動に駆られながら、レオニードは深く息を吸い込み、自制心を総動員して荒ぶる心を抑えた。
彼らに背を向け、作業を再会させながら耳を澄ませると、ナウムと親方の会話を聞き取ることができた。
「何ですか、ナウム様?」
「いつもここの庭は、アンタに植える物を任せていたが……今年はいくつか注文をつけさせてもらいたい」
「そりゃあ構いませんが、急にどうなされたんですか?」
「実はな、やっとオレの大切な人をこの屋敷に連れてくることができたんだ。だから彼女が望む花を植えたいんだよ」
ナウムの大切な人? まさか……。
思わずレオニードの手が止まり、顔が強張っていく。
こちらの気も知らずに、親方が「おおっ」と嬉しげな声を上げた。
「良かったじゃないですか! ナウム様は女性の好みにうるさそうだから、どんな人を連れて来たのか想像つかんなあ」
「きれいな黒髪の美人さんだ。なかなか口説き落とせなかったが、最近になってようやくオレの元に来てくれた」
明らかにみなものことを言っている。
間違いなく屋敷内にいるのだと分かって嬉しく思う反面、既にナウムが彼女を恋人のように扱っていることが腹立たしい。
殴り倒したい衝動に駆られながら、レオニードは深く息を吸い込み、自制心を総動員して荒ぶる心を抑えた。
彼らに背を向け、作業を再会させながら耳を澄ませると、ナウムと親方の会話を聞き取ることができた。
「何ですか、ナウム様?」
「いつもここの庭は、アンタに植える物を任せていたが……今年はいくつか注文をつけさせてもらいたい」
「そりゃあ構いませんが、急にどうなされたんですか?」
「実はな、やっとオレの大切な人をこの屋敷に連れてくることができたんだ。だから彼女が望む花を植えたいんだよ」
ナウムの大切な人? まさか……。
思わずレオニードの手が止まり、顔が強張っていく。
こちらの気も知らずに、親方が「おおっ」と嬉しげな声を上げた。
「良かったじゃないですか! ナウム様は女性の好みにうるさそうだから、どんな人を連れて来たのか想像つかんなあ」
「きれいな黒髪の美人さんだ。なかなか口説き落とせなかったが、最近になってようやくオレの元に来てくれた」
明らかにみなものことを言っている。
間違いなく屋敷内にいるのだと分かって嬉しく思う反面、既にナウムが彼女を恋人のように扱っていることが腹立たしい。