黒き藥師と久遠の花【完】
話を聞くほどに、怒りでボロが出そうになる。
しかし作業に集中しようとしても、レオニードの耳は勝手にナウムたちの会話を拾ってしまう。
「黒髪ってことは、東方の人ですなあ。あっちの女性は気立てがよくて穏やかな人が多いんですよね? 羨ましい限りですよ」
「いや……アイツは外面は良いが、かなり気が強い。怒らせたら怖い――」
ゴホン、とナウムが咳払いをして、おどけた声で話をしていると、
「一体誰のことを話しているんですか?」
疎らな足音と共に、女性の声が近づいてきた。
今まで馴染んできたものより少し高く、はっきりと女性だと分かる声。
聞いた瞬間、レオニードの鼓動が大きく跳ね上がった。
思わず我を忘れ、後ろを振り向く。
そこにいたのは、体の線がよく分かる白いドレスを見にまとった、長い黒髪の女性だった。
(みなも……なのか?)
一瞬、別人なのかと思ったが、顔立ちや雰囲気から彼女がみなもだと分かる。
髪はつけ毛をしているのだろう。凛とした表情で姿勢よく立つ姿は、つい最近まで男のフリをしていたとは思えない、清楚な貴婦人にしか見えない。
天窓から注がれる光を浴びているせいか、彼女の一帯が輝いているように思えた。
しかし作業に集中しようとしても、レオニードの耳は勝手にナウムたちの会話を拾ってしまう。
「黒髪ってことは、東方の人ですなあ。あっちの女性は気立てがよくて穏やかな人が多いんですよね? 羨ましい限りですよ」
「いや……アイツは外面は良いが、かなり気が強い。怒らせたら怖い――」
ゴホン、とナウムが咳払いをして、おどけた声で話をしていると、
「一体誰のことを話しているんですか?」
疎らな足音と共に、女性の声が近づいてきた。
今まで馴染んできたものより少し高く、はっきりと女性だと分かる声。
聞いた瞬間、レオニードの鼓動が大きく跳ね上がった。
思わず我を忘れ、後ろを振り向く。
そこにいたのは、体の線がよく分かる白いドレスを見にまとった、長い黒髪の女性だった。
(みなも……なのか?)
一瞬、別人なのかと思ったが、顔立ちや雰囲気から彼女がみなもだと分かる。
髪はつけ毛をしているのだろう。凛とした表情で姿勢よく立つ姿は、つい最近まで男のフリをしていたとは思えない、清楚な貴婦人にしか見えない。
天窓から注がれる光を浴びているせいか、彼女の一帯が輝いているように思えた。