黒き藥師と久遠の花【完】
「みなも、教えてくれ。一体誰がバルディグの毒を作っていたんだ?」
口調は穏やかだが、一言一言がやけに重く聞こえる。
浪司の事情は分からないが、これを尋ねるためにここまで来たのだろうかと思いたくなるような、切羽詰った響きがした。
ここで誤魔化すことは言いたくない。
みなもは唾を呑み込んでから、意を決して答えた。
「毒を作っていたのは、この国の王妃エレーナ様。……名前も姿も変わってしまったけど、間違いなく俺の姉さんだ」
言い終わった後、しばらく誰もが口を閉ざす。
急に訪れた静寂の中、パチッと焚き火の薪が弾ける音が響いた。
おもむろに浪司がうなだれ、乱暴に頭を掻いた。
「そうか、いずみだったか……あの聡明な子が、安易に毒を作るとは思えん。それだけ追い詰められていたのか」
浪司の言葉に、みなもは思わずぎょっとなる。
「どうして浪司が姉さんのことを知っているんだ!?」
思わず声が大きくなり、口調が鋭くなる。
それでも頭を上げた浪司は、嫌な顔一つ見せず、優しく微笑んだ。
「ワシはずっと前から、いずみのことも、お前さんのことも知っていた。『久遠の花』と『守り葉』の隠れ里にいた頃からな」
口調は穏やかだが、一言一言がやけに重く聞こえる。
浪司の事情は分からないが、これを尋ねるためにここまで来たのだろうかと思いたくなるような、切羽詰った響きがした。
ここで誤魔化すことは言いたくない。
みなもは唾を呑み込んでから、意を決して答えた。
「毒を作っていたのは、この国の王妃エレーナ様。……名前も姿も変わってしまったけど、間違いなく俺の姉さんだ」
言い終わった後、しばらく誰もが口を閉ざす。
急に訪れた静寂の中、パチッと焚き火の薪が弾ける音が響いた。
おもむろに浪司がうなだれ、乱暴に頭を掻いた。
「そうか、いずみだったか……あの聡明な子が、安易に毒を作るとは思えん。それだけ追い詰められていたのか」
浪司の言葉に、みなもは思わずぎょっとなる。
「どうして浪司が姉さんのことを知っているんだ!?」
思わず声が大きくなり、口調が鋭くなる。
それでも頭を上げた浪司は、嫌な顔一つ見せず、優しく微笑んだ。
「ワシはずっと前から、いずみのことも、お前さんのことも知っていた。『久遠の花』と『守り葉』の隠れ里にいた頃からな」