黒き藥師と久遠の花【完】
 毒を操り、一族を守り続けてきた『守り葉』。
 悪用される訳にはいかないと、外部の人間だけでなく、一族同士でさえも監視していたのだろう。

 つまり、みなもと共に生きるということは、自分たちも互いを見張らなければいけないということ。
 どちらかが敵の手に落ち、その力を悪用されることになれば、命を賭けてそれを阻止しなくてはいけない。
 最悪、相手の命を奪うことになったとしても。

 そう思った瞬間にレオニードの胸が痛み、目を細めた。

(彼女は子供の時から、一人で『守り葉』の使命と向き合って生きてきたのか)

 不意に、見たこともない幼いみなもの姿が脳裏に浮かぶ。
 仲間を失った心細さで小さな肩を震わせ、目に涙をため、それでも歯を食いしばって、懸命に前へ進み続ける……そんな姿が。

(俺が同じものを背負ったとしても、みなもの苦しみは減らないんだろうな)

 むしろ自分と一緒になれば、己を律するだけでなく、こちらを監視するという負担が増える。
 共に生きることが、より彼女を苦しめることになるかもしれない。

(……それでも俺は、みなもと共に生きたい)

 自分が抱えていくものだけでなく、少しでも彼女の重荷も背負いたい。
 みなもが肩の力を抜いて生きられるようになるならば、どんな苦労も惜しまない。

 これからは、心から笑って生きて欲しい――そう願わずにはいられなかった。
< 230 / 380 >

この作品をシェア

pagetop