黒き藥師と久遠の花【完】
 女性? 確かに男にしてはきれいな顔立ちだとは思っていたが……。
 しかし少なからず、そんな男が実在しているのは確かだ。現によく顔を合わせている人間の中にいるから知っている。

 みなもと言葉を交わしたのは少しだけだったが、芯の強そうな、自分が甘えることを許さない人物だという印象だった。
 まとっていた空気も、どこか危うげなのに、奥の手をいくつも持っているような、底知れないもの。

 今まで見てきた女性とは何かが違った。


 後日、みなもに改めて解毒剤の礼を伝えるために顔を合わせたが、彼女は男装のまま。
 正体を知っていても、やはりその姿から女性らしさは感じられなかった。

 レオニードは安易な嘘を語る人間ではない。
 けれど、本当に女性なのか確かめてみたい。
 そんな人の悪い好奇心が、胸の奥に居座っていた。
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