黒き藥師と久遠の花【完】
「可愛い弟分を、このまま放っておけるか。みなもの用事が済むまで護衛してやる」

「いつの間に弟分にされたんだよ。むしろ俺と歳が離れているから、遠縁のオジサンみたいなもんじゃない?」

「オジサン言うな。まだ三十四だぞ」

 実際の年齢というより、外見がオジサンじゃないか。
 そう言いそうになるのを抑え、みなもはわずかにはにかんだ。

「……ありがとう。心強いよ」

「そうだろうとも。お前さんはもう少し、人に甘えたほうがいいぞ。人間、一人で生きている訳じゃないんだからな」

 くだけたことしか言わない口が、珍しく真面目なことを言っている。
 浪司の言葉が耳に痛い。
 
 笑みを浮かべて「分かっているよ」と答えながら、みなもは背もたれに寄りかかり、外を流れる雪を見つめた。
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