黒き藥師と久遠の花【完】
「ありがとう、離れなくてもいいって言ってくれて。同情からでも、その言葉が聞けただけでも俺は満足だから――」
「違う、同情なんかじゃない!」
レオニードの声がにわかに鋭くなる。
押し黙った後に出てきた声は、心なしか震えていた。
「俺も……君から離れたくないんだ」
「……え?」
反射的にみなもは首を動かしてレオニードを見る。
息がかかるほど顔が近くにあり、胸が見苦しく騒ぎ出す。
こちらを伺いながら、レオニードがさらに顔を近づけ――。
――わずかに上向いたみなもの唇へ、己の唇を重ねた。
以前に解毒剤を飲ませた時とは違う、苦味のない口づけ。
何もないからこそ、伝わってくる温もりを全身で感じてしまう。
ゆっくりとレオニードの唇が離れた時、みなもは二人の間に割り込んできた寒さで我に返る。
緩められた腕の中で、みなもは体を回してレオニードと向き合うと、彼を見上げた。
言いたいことはたくさんあるのに、言葉が出てこない。
ただ熱く潤み出した瞳で、彼を見つめることしかできなかった。
レオニードが少し照れくさそうに微笑を浮かべた。
「みなも、どうかここで共に生きて欲しい。そのためなら、どれだけ君が重い事情を抱えていたとしても、まだ君に秘密が隠されていたとしても、すべてを受け入れたい。俺は君を……愛している」
一緒に生きてくれるの?
嘘ばかりで身を固めていた、弱くて臆病なこの身を愛してくれるの?
今まで背負ってきたものを持ったまま、貴方の隣にいてもいいの?
我知らず、みなもはレオニードを見上げたまま胸元へしがみつき、頬に一筋の涙を流した。
「どうしよう……レオニードに迷惑をかけ続けるって分かってるのに、すごく嬉しい」
指で涙を拭いながら、みなもは笑顔を取り戻す。
そしてレオニードの首へ両腕を回した。
「俺、かなり欲張りだから覚悟してよ? これで冗談だって言ったとしても、貴方を求め続けるから」
「その言葉、みなもに返そう。俺も自分で思っていた以上に、欲張りな人間らしい」
どちらともなく顔を寄せ、再び口づけを交わす。
ずっと求めていた温もりが惜しみなく注がれ、みなもの奥深くまで広がっていく。
「違う、同情なんかじゃない!」
レオニードの声がにわかに鋭くなる。
押し黙った後に出てきた声は、心なしか震えていた。
「俺も……君から離れたくないんだ」
「……え?」
反射的にみなもは首を動かしてレオニードを見る。
息がかかるほど顔が近くにあり、胸が見苦しく騒ぎ出す。
こちらを伺いながら、レオニードがさらに顔を近づけ――。
――わずかに上向いたみなもの唇へ、己の唇を重ねた。
以前に解毒剤を飲ませた時とは違う、苦味のない口づけ。
何もないからこそ、伝わってくる温もりを全身で感じてしまう。
ゆっくりとレオニードの唇が離れた時、みなもは二人の間に割り込んできた寒さで我に返る。
緩められた腕の中で、みなもは体を回してレオニードと向き合うと、彼を見上げた。
言いたいことはたくさんあるのに、言葉が出てこない。
ただ熱く潤み出した瞳で、彼を見つめることしかできなかった。
レオニードが少し照れくさそうに微笑を浮かべた。
「みなも、どうかここで共に生きて欲しい。そのためなら、どれだけ君が重い事情を抱えていたとしても、まだ君に秘密が隠されていたとしても、すべてを受け入れたい。俺は君を……愛している」
一緒に生きてくれるの?
嘘ばかりで身を固めていた、弱くて臆病なこの身を愛してくれるの?
今まで背負ってきたものを持ったまま、貴方の隣にいてもいいの?
我知らず、みなもはレオニードを見上げたまま胸元へしがみつき、頬に一筋の涙を流した。
「どうしよう……レオニードに迷惑をかけ続けるって分かってるのに、すごく嬉しい」
指で涙を拭いながら、みなもは笑顔を取り戻す。
そしてレオニードの首へ両腕を回した。
「俺、かなり欲張りだから覚悟してよ? これで冗談だって言ったとしても、貴方を求め続けるから」
「その言葉、みなもに返そう。俺も自分で思っていた以上に、欲張りな人間らしい」
どちらともなく顔を寄せ、再び口づけを交わす。
ずっと求めていた温もりが惜しみなく注がれ、みなもの奥深くまで広がっていく。