黒き藥師と久遠の花【完】
 でも、まだ足りない。
 もっと、もっと、彼の温もりが欲しい。

 心が願うままに、互いに舌を絡め合う。
 レオニードから与えられる熱に応えるよう、みなもの体がますます熱を帯びていく。
 治まらない動悸で胸は苦しいのに、体が彼から離れたがらない。

 次第に熱さに混じって、みなもの背筋や脚を妙に甘さのある痺れが這っていく。
 口の中をかき乱されるほどにそれは酷くなって、力を奪われてしまう。

 立っていられなくなり、思わずみなもの体がよろける。
 咄嗟にレオニードが背中に腕を回して引き寄せてくれた。

「……大丈夫か?」

 顔色を伺うレオニードが愛おしくて、みなもはそっと彼の頬を撫でた。
 
「うん……大丈夫。ただ、このままだと辛いから……」

 僅かに残った理性が、続きを言わせまいと引き止めてくる。
 自分が言おうとしたことの意味に気づいて、みなもの顔が熱くなった。

 レオニードも気づいたらしく、一瞬だけ困ったように目が泳ぐ。
 しかしすぐに視線をこちらに定めると、軽々とみなもを抱き上げ、ゆっくりとベッドに運んでくれた。

 みなもを丁寧に降ろすと、レオニードが頭を愛撫しながらベッドへ腰かける。
 見下ろされる形で彼と目が合う。
 と、急に恥ずかしさと言いようのない不安がこみ上げ、みなもは顔を逸らして身を強ばらせた。

 自分が望んだことなのに、逃げたくて仕方がない。
 もっと彼を感じたいのに、これ以上彼を知ることも、己を見せることも怖い。
 
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