黒き藥師と久遠の花【完】
 レオニードの手がみなもの頬に触れ、優しく顔を上に向けさせる。
 そしてもう一度、深々と口づけた後。
 みなもの火照った耳元でレオニードが囁いた。

「嫌だと思ったら我慢しないで言ってくれ。手加減できる自信はないが」

 彼の息に耳を撫でられ、思わず声が出そうになる。
 どうにか情けなさそうな声を呑み込み、みなもはレオニードの首にしがみつく。

「こんなこと初めてなのに、何が嫌だとか分からないよ。だから……貴方の望むままにして欲しい」

 これが自分にできる精いっぱい。
 一緒にいる限り、こちらの都合にレオニードを巻き込み続けてしまう。
 重荷になることもあるはず。
 それでも一緒にいたいと願う自分のワガママを、彼は受け入れてくれる。

 だからこそ、彼の望みに応えたい。

 レオニードから声にならない声で「そんなことを言われると、歯止めが効かなくなる」というつぶやきが聞こえてくる。
 そして耳から首筋に舌を這わせ、かすかに吸いついた。

 体へのしかかってくるレオニードの重みが、与えられ続ける温もりが、大腿を愛撫する手が、思考を奪っていく。
 服と胸当ての留め具が外され、みなもの素肌と胸が露になっていく。
 今まで作られてきた殻が剥かれていくにつれ、肌へ直接伝わってくる温もりに吐息が漏れた。

 彼のことしか考えられない。
 彼のことしか感じられない。

 誰かに縛られ、繋げられていくことが、こんなに嬉しくて気が狂いそうになるとは思わなかった。
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