夏の空を仰ぐ花
「今、自分がどんな面してるから分かってる?」


「え……美しい、ツラ?」


どあほ! 、と今度は明里のチョップが頭のてっぺんに直撃した。


頭蓋骨にビーンと響く。


「いでっ」


「好きで好きで、今にも死にそうな面さてるけど」


「オーマイガー」


とったに頬を押さえたあたしを見て、ふたりがゲラゲラ笑い飛ばした。


「翠、分かってるか?」


と、結衣が続けた。


「その真っ直ぐなとこ。あんたがみんなに好かれる理由だよ」


「え……?」


今度は明里が言った。


「そゆこと。その、体当たりど根性なとこもな」


そして、ふたりは目で秘密の会話をしたあと、声を揃えた。


行ってきな。


当たって砕けて、


こっぱみじんに、


砕け散ってしまえ!


「なにーっ! 砕けて散ったらおしまいだろうがあ!」


ギャーハハハ、とひっくり返りそうになりながら笑うふたりに背中を向けて、あたしは教室を飛び出した。


頑張れ、とか、きっと大丈夫、だとか。


そんな気休めより、ふたりの一言が、あたしの背中を思いっきり押した。


その言葉で、吹っ切れた。


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